とっちらかんと

~迷子の寄り道~

【未来いそっぷ / 星新一】あの時の塾の先生有難う。

こちらの動画で紹介されていた本、気になりつつも、既に読みたい作品も多いし積読もある。どうしよ~と思いながらお散歩したものだから、いつもの本屋さんに寄ってしまう自分の弱さよ。

作品の書き出しについて語っているので、内容を知りたくない方も安心して観られるし、誰かの解釈を知ることで、よく知る作品を改めて読みたくなる事もありますよね。動画概要欄にタイムスタンプもありますが、全部観て欲しいな~。個人的には亡き父親のエロゲ鑑定回以来の面白さでした。

 

さて、読みたいと思ったのは、動画内で谷口つばささんという芸人さんが紹介されていた『ノックの音が』という作品。興味を持ちつつ読まずにきた、星 新一作品の1つ。

動画がきっかけになって思い出したのですが、中学3年の頃、塾講師が教えてくれたのと同じ作家さんでした。こんなに楽しそうに誰かに話せる好きな物があるって良いな~と、当時自分の周りに居た大人達との違いもあって、憧れの様な感情をもちました。

その先生は、SF初心者へのおススメとして星 新一作品を挙げた、と記憶しているのですが、「ショートショートの素晴らしさが際立つから、たった1枚、この小さな紙の表裏だけって思ったら読んでみようって思わない?」と、私物の本を見せながら言った一言が印象的でした。

 

残念ながら、本屋さんに数冊並んでいた星作品の中に目当ての作品は見当たらず。タイトルから『月光条例』を連想した『未来いそっぷ』を買ってみました。『イクサガミ 人』もつい・・・。

今回、あの時の塾講師の言葉が素晴らしく的を射ていた事を理解できました。当時は「SF」という言葉で敬遠したのかな~毛嫌いは、機会損失への第1歩ですね。

自分が生まれてもいない頃の作品ですから、文体の読みづらさも覚悟していたのですが、杞憂に過ぎませんでした。最初の設定やらを理解しないと読み進められないような作品ではないので、SF作品のとっかかりに良い。今感じている事自体が錯覚かもしれないと思ってしまう、ふわふわしたような感覚も含めて楽しめました。

SF作品で驚かされる事の1つに、当時からすると遠い未来にしかないはずの製品や概念が登場する点がある。研究されていたとしても、作中に登場しているような仕上がりには至っていないはず。どういうふうに書いているんだろう、凄い。『未来いそっぷ』でも、機器に質問してその指示(回答)に従うなど、予知かと思う程の描写が幾つもある。便利さで起こる不便さが面白おかしく風刺されていたり、過去の作品で現代が皮肉られているようで楽しい。

時を超えて、読む時代によって感想が変わっていくんだろうな。寝かせておいて、また読みたい。