とっちらかんと

~迷子の寄り道~

【イクサガミ】新作を待つという体験。

実はこれ、読んでもいない旦那さんが強くおススメしてきたので読み始めたのですが、まんまと掴まれて悔しい思い出が紐づけられてしまった作品です。

これは歴史小説に分類されるのでしょうか、講談社さんの特設サイトでは「傑作時代アクション」と銘打ってありますが、まさに。物語のスピード感を損ねないようにそれぞれの過去も描かれ、この個性的なキャラクター達がどのような経緯で、「蠱毒」という1つの舞台に参加するに至ったのか、紐解かれていきます。時折、思わず歯を食いしばったり、とにかく引き込まれる。そんな自分の反応に気づくと悔しかったりもするのですが、3巻目になっても変わらないのだから凄い。

涙ぐんだ事も書こうと、「目頭が熱くなる」を検索してみると、生成AIによる言い換えに「胸きゅん」が並んでいて、思わず割愛した事を記録しておきます。

読み始めてから度肝を抜かれたのは、最初も最初。スパッと本題に入った「天」の冒頭でした。本題の捉え方によるかもしれませんが、歴史小説で感じた事のなかった冒頭の勢いに圧倒されました。

過去に読んだ作品では、主人公の性格や職、町の雰囲気、住人たちの仲、井戸端で専ら話題になっている世間のあれこれ、その地区の権力者達などの描写に、冒頭の結構なページを充てていた印象があります。そのような描写を挟むことで、「舞台となるその町の日常に読者を馴染ませようとしている」と、受け取っていました。それを定石とさえ思っていたので、覆されたような感覚は鳥肌ものでした。

全巻共通して、本を開くと、東海道五十三次の宿場の地図が描かれているので、今読んでいるのがどの辺りで展開されているお話か分かり易いし、宿場の現代の様子を調べるのも、なかなか面白い。『○○宿』と調べてみると、『東海道五十三次 〇番目の宿場 現代の○○県○○市』なんていうふうに出てくるので、なんとなくイメージに繋がり易いかなと。1巻と3巻にはそれぞれ、物語を分かり良くする補助的情報の掲載もあり、いずれも、物語が進み続けている事を実感できる要素にもなっています。

ゲームでも何でも、新しさを追う事がない私には、新作を待つ事への耐性がありません。最初は、「天」「地」「人」で完結していると勘違いしていたから購入したのでした。一気に読めると思って。そもそも、読んでもいない人のおススメでしたから、まずは1冊、と読み始めてみたのでした。

「ここからどうやって3巻で終わるのかな」と、2巻で疑問を感じ、3巻目で「これは終わらない」と確信。帯も、続きありますよ~という雰囲気だったもの。そこで、初めて調べ、2025年に最終巻「神」が発売される事を知ったのでした。この読書体験から、「小説の次の巻を待つ」という、初めての体験まで貰えました。ちょっと嬉しいかもしれない。

そうだ、「イクサガミ 手引ノ書」は店頭でもまだ入手できるのかな。講談社さんの特設サイトにPDFファイルがあるので、私はこちらで済ませましたが、小説を更に楽しめる内容だと思うので、是非おススメです。漫画「20世紀少年」に実際のメモが封入されていた、あの時に感じたような何かを感じました。