ラブホテルに身を隠した桐生とマコトは、ここでやっと、会話らしい会話を交わします。マコトがまず桐生に尋ねたのは、自身の兄、『立華不動産社長 立華 鉄』の現在についてでした。兄を探して蒼天堀に居たほどですから、ずっと願っていた兄との再会が叶おうとしている今、気にならないわけがありません。
しかし、桐生が語る立華は、マコトの知る兄とはだいぶ違う人物像でした。
マコトが最後に立華に会ったのは10年前。この頃に、「大阪に行くつもり」と聞いていた事で、祖父の元から家出したマコトは蒼天堀を目指したそうです。そして、移民を見つけては、兄について聞きまわっていたそう。兄を探す身寄りのない若い女性なんて、お金の為に女を騙して売り飛ばしていた尾田にとっては格好の的。「心当たりがある」という尾田の言葉を、マコトは信じてしまいました。
尾田の話を聞いて、嘘だったとわかったと言うマコトに、「まさかさっきまで信じてたの?」なんていう疑問を感じないわけでもありませんが、必死にもがいている時って、選択を誤る事も、人が絡むとつけこまれる事さえありますよね。判断力がおかしくなるような事って、あるものです。
「馬鹿みたい」
独り言のように呟くマコトに、「それでも」と言葉を繋げる桐生。
「それでも あんたは今度こそ兄さんに会える」
この返し方、良いですよね。「そんなことない」とかじゃなくて、マコトの話全体を受けたうえで未来に焦点を移してやるような。苦しい瞬間に留まって、自分では今に時を戻せなくなっているマコトが動けるように、揺り動かすような言葉に感じます。
兄がどう変わっているのか少し怖いと言うマコトは、子供の頃までさかのぼって語り始めます。 家族のそれぞれが生きる為の最善の選択をしたら、タイミングや方法が重ならず、悲しい行き違いが現状を生んだようなお話。日本に居る祖父の存在がわかってマコトと母親が来日したのは、立華と離れ離れになった数年後のこと。最初こそ喜んでいた母親は、馴染むことができない状況を苦に、命を絶ってしまったそう。この辺りも思う事がありますが、顔を覆って泣き始めるマコトに、自分の言葉は引っ込めます。
最近の出来事に差し掛かると、自分を助けてくれていた2人について口にします。これは李さんと真島さんの事なのですが・・・
自分を助けようとしてくれた人たちが次々に災難に巻き込まれていく。しかも、マコトには彼らのその後がわからない。受け入れようもないですよね。
「私の人生 ひどいよね」
言いたくもなります。でも、桐生が居て良かった。この時、一緒にいたのが桐生で良かった。自分にも重ねたのでしょうけれど、こんなに真っ直ぐな言葉もないというか、なかなか口にするのは憚られそうな心の内を、ゆっくりと吐き出します。
「長いこと暗い道を歩いてると この先もずっと暗いもんだと思っちまう」
少し驚きを見せるマコトですが、確かにね、桐生の言う通り、自分の道の先がわかっている人なんてきっといませんよね。予知能力者でさえ、自分のことは見えないというのを聞いたことがあるような気がします。 涙を流すマコトには厳しくも響きそうな言葉で選択肢を並べる桐生ですが、優しいふりで突き放すような「頑張れ」ではなく、「行けるとこまで付き合う」という姿勢を見せます。
マコトも、ここまで溜め込んできたものを涙と一緒に吐き出して、前に進む準備をしていたんだろうな~。ちょっとすっきりしたようにも見えます。神室町に行く事に心を決め、改めて桐生に伝えるマコト。
その言葉を桐生が聞き届けたところで、なかなか激動の章だった、『第十三章 罪と罰』終了です。
桐生も真島さんも嫌な嘘が無いというか、真摯なんだよな~その時向き合っている相手に。 こんなに都合良く仕上がっている人たちは居ないとわかっていても、なんだかちょっと、自分まで励まされる心地です。
タイトル: 龍が如く0 誓いの場所
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