ただ眠っているだけのような妙に美しく見えるリルムを乗せ、スムーズに沖へと進んでゆくゴンドラを見送りました。ゴンドラの後を追いかけると、見えなくなるまで見送るクックとマック。
どれくらい経ったのか、参列者たちが各々帰路につき始めると、クックがマックに話しかけます。泣くと思っていたマックが、お葬式が始まってから涙を流さない様子に驚いているようでした。マックも、自分自身の異様なほどの冷静さに驚いています。 そこへカイムがやってきて、リルムは幸せだったか2人に問います。 顔を見合わせる2人でしたが、「幸せだったよ」と、クック。
「お父さんも、とってもいい人だった」と続けられた言葉が、数少ないリルムの旦那さんについての描写。ここでは、「女王様も、いっぱい助けてくれたし・・・」という言葉が印象的だったのですが、それほどまでに民との距離が近いという、文字通りの意味なのかな。どちらにしても、何かを恨む方に心が向いていないのが救いにも思えます。
話しながら段々と涙がこみ上げ、俯いてしまうクック。するとマックが、カイムとおばあちゃんにリルムはずっと会いたがっていた、と続けます。マックは純粋に母親の事をカイムに教えたのだと思いますが、それを聞いて、カイムもこの表情です。
カイムが涙を流さないことに言及するクックも、責めるような気持ちではないんだろうな・・・でも、たぶん私もカイムと同じような表情で画面を観ていた気がする。 「カイム、強いね」という、マックの真っ直ぐな受け取り方が妙に苦しいのですが、カイムについて、『不死身で無敵』と、生前のリルムから聞いていたからこその解釈でした。
ここは、更に世界観に疑問を感じる部分となったのですが、『千年女王』であるミンが居るヌマラだけが特殊なのか、一部の人間だけが知っている国や、都市伝説のように噂される国があったりとか、『不死者』の存在に関する認識がどうなっているのかがいまいちわかりません。
カイムが不死者であることをマックが「すごい」と言うのを、寂しげな表情で聞いていたカイムは、意外にもすぐに「そうでもないさ」と答えます。クックもマックも素直にカイムに疑問をぶつけますが、カイムもしっかり向き合っているのがとても良い。
不思議ですよね、私達が生きる事に執着してしまうのは命に期限があるからなのかな。いつもロストオデッセイの記事でリンクを貼っている『永遠を旅する者』を読んだ時にも感じたのですが、何度も大事な人の死を見送るというのは、何度も孤独になるような、何度もリセットされるような、生きながらに賽の河原におかれるようなものかもしれない。ちなみに、この本はゲームを進めると全て読む事ができるカイムの記憶をまとめたものかと思うのですが、私はフライングしました。短編集として面白いので、ゲームを知らない方にもおススメ。
カイムの話を聞いたクックとマックの反応の違いも面白かったのですが、ぽろぽろ零れる涙は止まらなくても、「強くなりたい」と言うマックの強さを感じます。
その時、萎れてしまっていたテンダーフォーナが息を吹き返します。 「お母さんが近くに居て、願いを聞いてくれた」と言い始めるマックをクックが宥めるのですが、そう思いたいマックの気持ちもわかる。この2人は対極のような描写が多いからか、バランスが良い印象。
このシーンでは、言葉少なでも、クックとマックに伝えようとするカイムの表情やらが良かった。そもそも、言葉にできる事ばかりではありませんよね。リルムの事だって、2度も娘を亡くしているのだから辛くないわけがないもの。
言語化、言語化とよく言われるようになりましたが、言葉にできれば良いというものでもなければ、言葉にできる事ばかりでもないと思っちゃう。状況や立場など様々な要因で異なるとは思いますが、単純に『言語化』と考えるとね。それでも、伝える事を放棄したわけではないカイムのように、要所要所で伝えていけば、いつかそのピースが形になって、誰かに何かが伝わるかもしれないなと、なんとなく希望のようなものも感じます。
タイトル:ロストオデッセイ
販売:©Microsoft
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